「子どもの自殺過去最多、目立つ〝学校原因〟異変察知急ぐ」その対応策が一人一台タブレット配布という不見識!情けない…【西岡正樹】
■情報過多の渦に飲み込まれていく子どもたち
思い出せば、私が教師になった48年前、先輩の教師に言われたことがある。
「小学生はつまらない授業でも寝ることはないから、もし子どもが授業中に寝ることがあったら体調が悪いと思った方がいいよ」
「子どもの自殺ってないんだよね。子どもは万能感があるからね」
しかし、50年近くたった今、そんなことはない。
1年生であっても、6年生であっても、授業中に寝る子はいるし、小学生の自殺が、毎年どこかで報告されるようになった。子どもたちの生活環境の変化が要因だと思うが、その傾向が強くなったのは、「IT革命」と呼ばれた1995年以降である。人びとはIT機器(携帯、パソコン、スマホ、ゲーム機)に没頭するあまり、時間を忘れ、人と人が関わる時間がどんどん失われていった。
どのような革命にも、「革命」という急激な変化に対応できない「弱き者たち」は少なからず存在する。1995年以降のIT革命にも、少なからず弱き者たち(犠牲者)はいるのだ。子どもたちこそが、その「弱き者たち(犠牲者)」なのではないだろうか、と私は思っている。そして、今もなお、弱き者たちの「依存症(スマホ、タブレット、ゲーム)」「引きこもり」さらに「自殺」という悲劇が、私たちの前に課題として立ちはだかっているのだ。
私が思うに、子どもたちの生活環境を良くも悪くも変えたのは「IT機器」であり、また、子どもたちが持っていた万能感を奪ったのも「IT機器」である。子どもには成長に応じた情報処理できる適度な情報量があるはずなのだが、家庭でも学校でも、それを無視した過剰な量が「IT機器」によって、子どもたちに与えられているのではないだろうか。そんな情報過多のなか、子どもたちはうまく情報処理できなくなっているのではないか。
私は確信する。今こそ、「弱き者たち」たちの支えになるのはタブレットではない。近くにいる他人(ひと)なのである。
文:西岡正樹
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